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短篇小説:おりもじ
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夕焼け空
[人生]
2010年2月7日 2時32分の記事
■人生:SERIOUS■
夕焼けを忌む母。
その理由は自分の生に深くかかわりを持っている。
FROM:なつかしい言葉達
http://xss.blog116.fc2.com/
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空が綺麗に夕焼けになると、母さんは必ずこう言った。
「あれは空が焼けているのよ」
忌々しい顔つきでそう言う母さんを見て、きっと母さんは夕焼けが嫌いなんだなあと思っていたものである。そして、あんなに綺麗なのに何で嫌いなんだろう、そうも思っていた。
だけれどそれを口に出すことをしなかったのは、かつて一度それをした時に、母さんが凄い形相で怒ったからである。いつも優しい母さんが、夕焼けの話をした時だけ恐ろしい鬼のように見えて、だからそれ以降は黙って母さんの言うことに頷いていた。
そうして、ずっと気持ちを隠していたんだ。
そんな思い出があったからだろうか、大人になってからの自分は解放されたかのように夕焼けの写真を良く撮るようになった。元々夕焼けは好きだったし、出来れば一瞬で消えてしまうそれを美しい形で保存したいと思っていたのである。何度か写真に残した夕焼けはやはり綺麗で、これを保存する為ならばと一眼レフのカメラまで購入したくらいだ。
奇しくもその写真は、ふらりと出したアマチュア写真コンクールに入賞した。
写真につけたタイトルは皮肉を込めて「焼ける空」。
審査員はこのタイトルと切り取られた赤い空のリンクについて、絶妙だとコメントしていた。それは自分の心の中に、入賞の喜びだけでなくどこかチクリと刺さる何かを運んできたものである。
焼ける空は、母さんが嫌った空。
それがこんなふうに評価されることは、まるで母さんへの裏切りのような気がしていた。しかしそう思う心の裏では、母さんを貶めようとする後ろ暗い悪意に似た気持ちもあったのかもしれなかった。
夕焼け空を見ると心が落ち着く。
心の底から綺麗な空気が巡るような、そんな気持ちがしていた。かつてはただ綺麗だと思っていたそれが、今ではまるで浄化の儀式かのように思えていたのである。
何故こんなにも夕焼け空を想うのだろう。それは自分にとって長らく疑問そのものだったが、その理由を深く考えることはしてこなかった。しかしその答えは、どうやら母さんが持っていたということに、ある日唐突に気づいたのである。
それは、盆の時期のことだった。
随分と年をとってしまった母さんと共に、先祖代々からの墓地に墓参りに出向いたとき、徐に母さんはその一言を放ったのである。
「貴方の父さんは、此処へは一度も来たことが無かったわ。当然かしらね、あの人の犯したことを考えれば、来たくても来れるもんじゃないもの」
深い皴に輪をかけるようにして放たれたその言葉は、昔のような辛辣さは失われていたものの、全くの緩慢というわけではなかった。母さんの言葉がなかったら、恐らく自分は父さんの存在など思い出さなかっただろう。
父さんという人は、自分が幼稚園児だった頃に逝去した。そして、逝去するその前日に母さんの実家に放火という犯罪を働いたのである。母方の祖父と祖母はそのために焼死し、残された母さんは一人きりで自分を育てなくてはならなくなった。父さんがどうしてそんな事をしたのか、それは良く分からない。ただ、母さんの嗚咽が幼心に焼きついただけだった。
「貴方のその顔、すっかり父さんに似たわね」
墓前を去る寸前、母さんが放ったその言葉は実に緩やかな口調だった。しかしその言葉を耳にした瞬間、自分の心の中に広がった夕焼け空は、すっかりと全ての答えを示していたものである。
夕焼け空とは、確かに、空が焼けているのに違いなかった。
いや、あの赤い空は、焼けた心が映し出す色に違いなかったのである。
END
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