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第四部 4話【チビクロ】
[ハラベエさんの犬星☆猫星(第四部)]
2013年5月3日 1時35分の記事

ハラベエさんの犬星☆猫星
=BEEとハラベエの愛の物語= 作・原  兵 衛 
第四部連載開始!
第四部 4話【チビクロ】
UPしましたー見てね(。・ ω<)ゞ♪

☆今回のお知らせイラストは
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☆【第0部】
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☆【第一部】
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☆【第二部】
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☆【第三部】
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ハラベエさんの犬星☆猫星
=BEEとハラベエの愛の物語= 作・原  兵 衛 

第四部 4話【チビクロ】


小林旭さんの公演は、六月末日に幕を明けますが、他にも二三の企画を抱えて、東京大阪間を頻繁に往復する日々が続いたハラベエさん。
 忙中閑あり、数日間、空白の時間というか、千里でのんびり過ごす機会に恵まれました。
 何はともあれ、ご無沙汰していた他の犬類・猫類の顔を見ようと早朝の之の
字池のコースを歩くことにしました。
 新御堂筋の側道をを南下して、地下鉄桃山台の駅を過ぎると、左手の木立の間から之の字の池が見え、ラジオ体操の掛け声が切れ切れに聞こえます。
 尚も南下し、池を巡る公園の南端に架けられた歩道橋を、御堂筋を横断する形で渡る頃には、ラジオ体操が終わったらしく、三々五々辺りに散っていきます。
 従前通り、ハラベエさんは之の字の書き順を逆にたどりましたが、顔なじみの犬類とも、久しぶりに顔を合わせました。
 彼や彼女たちの行動はいつも通り、何ら変わりないようです。
朝の散歩は、休養十分でしょう、小型犬でもリードが引きちぎれんばかりに飼い主たちを、引きずり回しています。
 ハラベエさんとは取り立てて、接触しようとする気配はありませんが、どの子も一度は必ず視線を送ってくるようです。
 その視線には、ただ単に懐かしさや歓びだけではなく、何か畏敬の念が感じられるのです。
 どうやら、犬星の宇宙船に搭乗して、宇宙旅行も経験しているハラベエさんを、仲間として受け入れているのともう一つ……。
 ビッグ・ドッグを頂点とする犬社会で、数少ない特筆すべきリーダーの一人、BEEとの繋がりがそうさせているようです。
 近い内に、又宇宙の旅に出るであろうハラベエさんに、エールを贈っているとも感じられます。
 元気をもらって勢いづき、小走りになったハラベエさん、アヒルの島に差し掛かると、相変わらず老アヒルが一人寝そべっていましたが、物憂げなその目には、歓迎の色があります。
『……久しぶりやな……どこに行っとったんや?』
とでも云ってるのでしょうか……ごインキョさん。
ごインキョさんに軽く手を振って、水飲み場に急ぎました。
 ラジオ体操が始まる前ですと、数名の猫類好きが、クロちゃんを囲んで、話しかけたり持参のキャットフードを食べさせていたものですが、今は人影はありません。
『遅かったか……』
と、独りごちましたが錯覚でした。
 ハラベさんが思い浮かべていたのは、かなり以前のこと、今なお同じ風景が展開している訳がありません。
 でも明朝は早く来てみよう、あるいは……。
 ハラベエさんは、久方にハツラツさんに会いたいという気持もあり、そう決めると帰りかけたのですが……。
 一瞬目を疑いました。
 水飲み場の、コンクリートの天板に蹲っている黒い猫の姿を見たからです。
 クーチャン?……いや、クロちゃんかな……違う……二人よりほっそりしている……これは別人、いや別猫だ……さしずめチビクロといったところか。
 と、ハラベエさんが思い至った時でした。
 彼、いや、彼女かも知れない、ハラベエさんが名付けたばかりのチビクロは、突然大きく伸びをすると水飲み場から飛び降りました。
 ?……。
 チビクロは振り向いて、ハラベエさんに一瞥与えると、林間の緩い上りを数歩行っては、振り返る仕草を繰り返します。
 それは以前、クロちゃんがハラベエさんをを誘った時の姿に酷似しています。
まして、どうやら目指すは例のマンションと思われます。
 これは何かメッセージがあるものと思い、ハラベエさんはチビクロの誘導に従いました。
 ねぐらを巡る雰囲気に、以前と変わったところはありません。
 お世話をして下さる存在にも恵まれているのでしょう、座布団やタオルで設えられた寝床も、清潔で寝心地も良さそうです。
 ですが、仲間らしい猫類の姿はありません。
 と、声が伝わってきました。
『今は私独りです……』
 このところ、人間社会での本業にかまけていたハラベエさん、新鮮な感覚でチビクロの会話に応じました。
(君は?)
『四人組の一人ですよ』
 (四人組?……ああ、あの子たちの一人……といっても、どの子だったか……)
『識別できないいでしょう……人間世界でも人種が変わると、みんな同じ顔に見えるんでしょう……ところが、同一人種間では、お互い微妙な差を識別しているでしょう』
 (ふむふむ……ところで君以外の子は?)
『みんな、快適な居場所に落ち着いています』
 (君は?)
『ぁ、申し遅れました……私、ビッグ・ドッグの指令で、この地区に赴任して参りました……名前は、お付けいただいた名前で登録致しました、改めて……チビクロでございます』
(ハラベエです……私……あ、自己紹介は無駄ですな……もう、全てご存知ですやろ)
『はい』
 (……と云うことは……BEEと同じような立場……つまりリーダーをなさっている)
『と、とんでもない、BEE様は、リ−ダー目指して研鑽を重ねている前途有為な猫類や犬類の若い世代にとっては憧れの的……足元にも及びません、同列に扱われては恐縮の至りです……』
 (BEEが憧れの的?)
『はい、元々リーダーの地位は、犬類と猫類の廻り持ちでして、基本的に年功序列によって選任されるのですが、BEE様がこの度特殊任務にお就きになり、若造の私が急遽起用されることになりまして、光栄だと思う反面、底知れぬ重圧に押しひしがれております』
(そうですか……ところでBEEの特殊任務というのは?)
『私共が承知しているのは……超新星の調査と云うことだけです』
(超新星?)
『ごく最近発見された新星ですが、その位置、規模など全て広大なこの宇宙の中心となる条件を備えている……と、予測されます』
(そうですか……それにしても、BEEの存在が、皆さんの憧れの的と聴いても、俄にはそうと信じられませんが……)
『無理ありません、子供がいくら成長しても、親にとっては自分の庇護下にある弱い存在であるといった程度の認識なんでしょう』
(その通り……よく判るね……人間についてよく勉強してるんだ)
『それ程では……』
 と、ちょいとはにかみ気味のチビクロを、好ましげに見守るハラベエさん、
BEEの代役としてうってつけ人材、いや、猫材だと感じていました。
 そして、超多忙な身でありながら……何しろ宇宙全体を統括しているのですから……細やかな配慮をするビッグ・ドッグの能力の素晴らしさに深く感じ入るハラベエさんでした。
 その日いろいろと話し合い、チビクロの寝床の傍らで、うたた寝も楽しんだ後、空腹を覚えましたが チビクロの食事をお裾分けしてもらう訳にも行かず、ハラベエさんは、明日を約して寄宿先に帰りました。 
寄宿先というのは、居候先とも云えます。
居候先は、新御堂沿いの千里中央と桃山台の中間地点の、豊中市側の集合住宅です。
 母と娘の二人暮らしです。
母は元妻Y子、娘はK子、ハラベエさんとY子との間に生まれた二人の女の子の妹の方です。
放埒で手前勝手なハラベエさんに愛想が尽きて、娘二人を連れて出て行ってから三十年、紆余曲折の末、そこにハラベエさんが現在居候になった経緯は、以前触れかけたこともありますが、云うならば、かの菊池寛の『父帰る』のハラベエ版といったところです。
そのハラベエ版『父帰る』と、人生の大半を過ごした『居候ぐらし』かてて加えて、芸能界での幾星霜の間に触れ合った群像、これらを材料に……と、あれこれ構想は描くものの、なかなか取りかかれないハラベエさん、ほんとにノラな男です。
それにしても、よくも居候が続けられたものです。
幼年時代はともかくと、除外したいけど、そこにも何やらそれらしい成り行きが見え隠れしてます。
ま、元妻のY子が別れを告げて出て行くまでの、千里中央の住宅での暮らしぐらいが、まともに表札掲げての、居候ではない数年……それも元妻の愛想づかしでチョンでした。
ただ、救いは交友関係……いい友達に恵まれました。
当たり前です、いい友達があったから、いい居候先にも恵まれたと云えるでしょう。
そんないい友達も大半は、幽明界を異にする今日この頃です。
BEEと再び行動を共にする日がくるまで、チビクロ相手の日々を重ね、これが最後かと思われる仕事に没頭するのもさることながら、古き良き日のいい友達との明け暮れを綴ってみるのも一興と思い始めたハラベエさんです。

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〜OGUNI・WORLD〜
地域:大阪府
性別:男性
ジャンル:趣味 漫画・小説
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シーズの愛犬BEEとハラベエを取り巻く生き物たちとの、
出会いと別れを描いた感動、ファンタスティック・ノベルです。

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