厚生労働省で掲示している「
先進医療技術」。15年4月1日現在、108種類ある。厚生労働省のホームページ(HP)を見ていると、根拠法がつらつらと書かている「役所的な表現」が並んでいる。HP訪問者である国民は、読む前に参ってしまうのだ。
それをちゃんと、かみ砕いて書くのが新聞記者。新聞の方が理解しやすいのは、平易に書いているからである。新聞記者はいまや「役人の通訳」なのである。
さて、先進医療技術とは、厚生労働大臣が認めた108種類の医療技術のうち、患者の希望により、保険診療との併用が可能な高度な医療技術。
先進医療技術は、通常は保険診療との併用を認めていないものの、108種類については認めている。保険診療対象とするのかどうかの評価を行っているのが特徴だ。
つまり、先進医療技術等保険診療との併用を認めた代わりに、先進医療技術と保険診療を併用した治療を行った保険医療機関から定期的に報告を求め、技術の有効性や安全性の確認を行っているのである。
先進医療部分の費用については全額自己負担。患者側は一般の保険診療の場合と比べ、先進医療部分の費用を多く負担する。その費用も医療の種類や病院によって異なる。先進医療部分の費用以外の診療部分の費用は、一般の保険診療として扱う仕組みだ。
たとえば、先進医療部分を含む全医療費が100万円で、先進医療部分が20万円だった場合、保険給付対象は80万円となる。3割負担の患者であれば、一部負担額は保険診療部分の24万円と20万円の計44万円となる。ただ、一部負担部分も、「高額療養費制度の適用」により、大幅に軽減できるので要注意だ。
先進医療技術の事例を紹介する。
?多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術=白内障の治療時の視力矯正のために、水晶体の代用として眼球後房に挿入されるレンズ。要は、白内障の手術の際に遠近両用のレンズを入れてしまうという、根本的な老眼対策。
?重粒子線治療・陽子線治療=放射線の一種である重粒子線(炭素イオン線)や、粒子線(陽子線)を体外から病巣に照射することにより、悪性腫瘍(がん)を治療する。
?抗悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝子検査=手術中に得られた組織から特殊な方法で抗がん剤耐性遺伝子を判定する。効果的な抗がん剤の投与を行え、不要な副作用を抑えることができるメリットがある。
?高周波切除器を用いた子宮筋症核出術=これまで子宮全摘術で治療されてきた子宮筋症について、開腹後に新たに開発されたリング型の高周波切除器を用いることにより、腺筋症組織だけを切除(核出)する方法。全摘術と比べ身体への負担が軽減される。
?前立腺がんに対する根治的前立腺全摘除術における内視鏡下手術用ロボット支援=これまで前立腺がんの根治的手術としては、前立腺の開創手術による全摘除が一般的だった。ただ出血量が多いのと、勃起神経の切除に伴う術語勃起障害により、術後の生活の質低下は避けられなかった。そこで複数の手術補助機能を統合したロボット機能を内視鏡機器に付加し、開創せずに内視鏡下手術を行えるようにした。
5種類を挙げてみたが、これらは生命保険や損害保険、がん保険の特約で「先進医療技術」規定が盛り込まれていれば、保険金が支給される可能性がある。
高齢者に多い?の症例については、保険診療と高額療養費制度の活用、保険金の支給との3セットで、「眼鏡を架け替える厄介さはなくなるし、特約部分の保険金支給で、実質的に自己負担はないばかりか、得した気分になったよ」という実体験話もある。