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第二部 4話【人類は、傲慢じゃないか】
[ハラベエさんの犬星☆猫星(第二部)]
2012年6月15日 19時52分の記事

ハラベエさんの犬星☆猫星
=BEEとハラベエの愛の物語= 作・原  兵 衛 

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ハラベエさんの犬星☆猫星
=BEEとハラベエの愛の物語= 作・原  兵 衛 

第二部 4話【人類は、傲慢じゃないか】

 
(之の字池)での別離以来、老人とクロちゃんことクーちゃん二世に遇うことはありませんでしたが、やがて散歩仲間の間に哀しい噂が流れました。
 あの男性が散歩の途中倒れ、運ばれた病院で亡くなったというのです。
 黒い猫が傍を離れようとしなかったそうで、最期まで尽くすいかにもクロちゃんらしいと、涙する老婦人もいました。
 明日はわが身と、身につまされる想いもあるでしょうが、ハラベエさんは、犬類猫類と共に宇宙への旅に出発して行った、多くの姿を思い浮かべ……今頃は仔猫たちとも再会を果たしているかもしれない、よかったね……と言いかけて……あかん、不謹慎やと思われるがな、と慌てて口をつぐみました。
 しかしこの事件も、いずれ風化していくでしょう、あらゆる生命体の中で、人類ほど、忘れるという特技に長けているものはいません。
 地球何十億年の歴史に於いて、数限りない消長が繰り返され、その都度……此を教訓にしよう、とか、風化させてはならない……などという言葉が飛び交ったことでしょう。
 にもかかわらず、人類は他の生命共々、絶滅と誕生を繰り返してきました。
 いうなれば、風化させようがさせまいが、教訓にしようしないにかかわらず、たかだか何千年から得た知恵など、何十億年の地球の営みの前では、汚い表現になりますが、それこそ、屁の突っ張りにもなりません。
 良く聞く言葉見る文字に(想定外)がありますが、言い訳にもなりません。
 ひたすら研究に勤しんでいる方々や、その任に当たっている人にはには申し訳ありませんが、あなた方の予想や推論、つまり想定は甘いとしか言いようがありません。
想定外だから致し方ないと、責任逃れをしているようにも思え、以後発表される数字は……此だけ言っておけば間違いないだろう……とばかりに大きくなっています。
 森羅万象、全てあなたのの想定内にある、なんて考えるのは傲岸不遜なんですよ。
自分たちの住む肝心かなめの地球について、いかほどの知識があるというのでしょうか……まだまだ、いちばん外側の一部を垣間見た程度じゃないんですか。
といって卑下することはありません。
どうせ、地球何十億年の歴史の中で無数に繰り返されてきたのが、大自然の前に敢え無く散っていった人類の歴史なんですから……。
今のところ、局所的に発生している災害が、全地球規模で発生した場合、南米のどこかで云々されている、暦が必要なくなる日、つまり世界最終の日が訪れるという話も、あながち絵空事には思えません。
ハラベエさんには、地球を我が物顔に振る舞っている人間に……もし神という存在があるとすれば……その神が人間に戒めのサインを送ってるのではないかと思えます。
いずれ必ず訪れる破滅の日、その後必ず訪れる再生の日、せいぜい伝えられるのは、人間を初めとする全ての生命のDNAぐらいのものでしょうか。
これも、せめてこれぐらいは残っていって欲しいというささやかな希望に過ぎませんが……
いずれにしても、何千年何万年、人間中心の世界が続こうと、何十億年の地球の歴史の中では、長い長い巻紙みたいな年表に針の先でつついたような、ほんの僅かな点ほどの時間です。
広大無辺の宇宙の片隅、ちっちゃな埃みたいな星で絶えることのない争い事、
無駄なことですね。
 ショーちゃんの話によると,争いの絶えなかった犬星猫星に、人類は平和な世界をもたらしたそうです。
 機会があれば、ショウちゃんの助けを借りて犬星に行き、末期的な情況にある現在の地球を救えるようないい知恵を学びたいと願うハラベエさん。
 ま、学んだからといって、実現は困難を極める、身の程を心得ているハラベエさんですから、そんな諦めに似た心境でいるのも事実です。
 但し、あの夜。
ショウちゃんはその高等技術を使い、犬星の歴史や現状について諄々と説き進めました。
 その間に一回だけ、そう確かに一回だけ ショウちゃんの語調が激しくなり、
少々退屈を覚えていたハラベエさんに緊張感が走りました。
その時ショウちゃんは異犬種間の交配について触れていました。
その怒りさえ感じ取られる緊張感が、ハラベエさん自身も日頃から考えていることと原因が同じでと知って急速にほぐれ、ついには共感の熱い想いにもえていたのです。
 宇宙船で人類と共に移住してきた犬類に純血種は殆どいません。
 人類は趣味趣向で新種を作出していたのです。
 観賞用愛玩用として、あるいは各種の狩猟や、牧畜で使役するのに適した犬類を作出することに努めたのです。
 より豊かな食生活を求めて、食用の動植物に品種改良を重ねている人類。
 食用に供されるために作出された犬類もいるようです。
 作出……この文字に、犬類猫類の図鑑で接したとき、ハラベエさんは頗る違和感を覚えたものです。
 生命を作り出す、たいそれたことです。
 人間の驕り昂ぶりを感じました。
 創造主でもあるまいし、それこそ傲慢もいいところだと……。
作出された方はどんな思いをしているのでしょうか?
植物ならまだしもですが、それでも……要らんことをせんといて、やはり野に置け蓮華草だ……と、ぼやいているかもしれません。
 例えば花……より美しくより珍しく変化していくのに満足しているのでしょうか……改良され,花たちは嬉しいのでしょうか。
 豪華な菊の懸崖や、絢爛たるバラ園の景観より……野に咲く、名も知らぬ一輪の花に惹かれ、心癒される思いにしばし浸っているのが好きなハラベエさんでした。
 ちいさな花びらが微笑んで、優しい言葉を囁きかけてくるような気がするからです。
 他の生態系の領域に踏み込み、にしていいものなのか……。
 悲憤慷慨するハラベエさんですが、こと動物に思いがいたると、俄然ハラベエさんの胸は激しく波立ちます。
 捕鯨の問題です。
動物保護の精神は理解しますが、ことさらに日本をターゲットにして騒ぎ立てる、日本バッシングには抵抗があります。
 そりゃあ、世界の海を舞台に、獲り尽し買い漁る、その傾向は認めます。
 しかし、我々の、古来からの食文化も認めてもらいたい。
四方を海に囲まれた日本です……海産物に栄養源を求めてきましたが、鯨を例に取れば、全身余すところなく頂戴し、活用してきました。
 お社にお祭りして、感謝と尊崇の気持ちを顕してきたのです。
 昔、欧米の捕鯨船は、鯨の油のみを目的に乱獲していたそうです。
 捕鯨反対を唱えて、調査船に体当たりを敢行してくる団体の中には、捕鯨を生業にしていた先祖のおかげで、この世に生を享けた人間だっているはずです。
 此はこれは……どうやら言葉が行き過ぎたようですね。
 捕鯨を擁護するあまり、ハラベエさんの論理は大きく飛躍しました。
 供養しているからといって、獲り放題でいいとは言えず、捕鯨反対の人達も、おいそれと……ああそうですかと……あっさり納得して引き揚げる訳がない。
 忸怩たる想いのハラベエさんでした。



→ハラベエさん徒然草ヘ〜

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