政治家を見る眼 | |
[日本の政治] | |
2017年6月11日 23時59分の記事 | |
今朝(6月11日)のTBS『サンデーモーニング』の“風をよむ”というコーナーで、若者の安倍政権への支持が突出して高いことが言われていました。そのポイントは経済なのですが、観ていてその経済というのは、実のところかなり近視眼的な傾向があるように思いました。この近視眼的な傾向が実は経済を悪くしていると考えます。
この安倍政権における経済については、これまでも書いてきましたし、いずれまた書きますが、この番組を観ていてふと過去に読んだ本の一節を思い出しました。 その本は、『文書心得帖』(2013年 ちくま学芸文庫 鶴見俊介著)というものですが、以下のように書かれていました。 そうすると、いま、選挙の宣伝、応援の演説を聞いたりするとき、こういう調子の人は戦争のときだったら、あれぐらいの人だな、どういうふうにひっくり返るかわからない、といろんなことを考える。戦争中のもとに体験があって、もと聞いた口調と同じ口調で演説している人がいますから。戦争中はああで、戦後はこうで、高度成長以降の今はああだとすっかり戦前と似た顔をしているひとがいる。いま自分が見ている大臣とかの、いろんな演説とかを聞いたとき、それを全部自分の絵の具を使って描き直してしまう。(文章心得帖 78頁) この本は元々は1985年に書かれたものです。鶴見氏は1922年生まれで、戦後はリベラル系として位置づけられると思います。しかし、様々読むと鶴見氏の感覚は今の時代において非常に貴重な視点を与えてくれます。むしろ戦争を体験してきたその感覚が、今の時代に非常に貴重なものになっていると言った方が適切と思います。 そのような鶴見氏の言説の中で上記の言葉もその一つでしょう。まさに戦争を体験し、生き抜いてきたものだけが持つ視点(眼)で、現在を生きる私たちには確実にない眼です。先の大戦において多くの犠牲が出、国が滅びたのは、危ない無責任な政治家にその責任があると鶴見氏は言っているのだと思いますが、そういう無責任な政治家を見分ける眼を過酷な時代を生き延びて体験的にわかっているというのが、この世代なのだと思います。鶴見氏だけではありませんが、この世代が体験によって体に染みついた政治を見る眼というのが、やはりあり、それが戦後において危ない政治家を排除していたのだと、この言葉を見て率直に思いました。それが平和を形づくってきた大きな要素の一つでしょう。 しかし、現在を生きる私たちの多くは、この眼を持っていません。それは平和の時代が長く続いたからです。このことは好運この上ないことですが、同時に鶴見氏の世代のような見極める眼がなくなっていることは確実になっていると考えます。このことはマスコミや政治家に感じますが、いずれにせよこれこそが、本当の意味での“平和ボケ”と言えるもので、この平和ボケは戦争とか、タカ派的なものが非常に刺激的な非日常的なものに見えるリスクをはらんでいると考えます。それは、戦争に対して非常に軽々しく考えることであり、非常に危険なことです。このような見識が非常に多くの犠牲を生み出すことに繋がるのは間違いないでしょう。 このようなことは、単に20歳代の若者だけの話ではないでしょう。50歳代くらいまではこのような傾向があります。戦争を知らない世代であるわけです。安倍政権の支持率の裏にはこのようなものが確実にあると考えます。第二次安倍政権が発足した頃、やはり右傾化、タカ派的なことが非常に魅力的なものに見えていたのではないかと考えます。それは、戦争を知らない世代だからこその、それまでの時代の裏返し、反動であると考えます。このことと経済の不透明さや揺らぐ日本の世界における経済的地位というのがあいまったと考えます。結果、鶴見氏の世代のような眼がない故に魅力的に見えたのだろうと思います。そして、このことは、今のままだと、痛い思いをするまで目が覚めないということになることを意味しています。 戦争を知っているからこそ、戦争や軍事に慎重な眼、厳しい眼を持つことになり、実は国家運営がしっかりとなされていくと考えます。平和主義で平和が長く続く日本で、このような見識を育てることが大きな課題であると考えます。盲目的な軍事問題の否定でもなく、盲目的な賛意・支持(今はこの状態)でもない、冷静な眼を持つことが非常に重要でしょう。盲目的な否定は今の時代は反動を招くことは忘れるべきではなく、盲目的な賛意・支持は確実に破滅を招いていきます。 しかし、いずれにせよ、平和は何より大切です。どんなことがあっても。そのためにどうしていくべきかを考えないといけません。ただ、誤解がいないように言えば、安倍政権の積極的平和主義は、平和主義ではありません。むしろ戦争主義で、そのことは『ザ・フナイ』で書いてきました。 | |
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