配当所得は、事業所得や給与所得など、他の所得と合算、5〜40%の累進税率で課税される総合課税制度の枠の中にあります。ただ、上場株式等の配当所得については、申告分課税を選択すれば、上場株式等の譲渡損失額、または前年3年以内の各年に発生した上場株式等の譲渡損失の金額のうち、前年以前で控除しきれなかった金額から控除できる仕組みになっています。
たとえば、15年分は未確定でしょうが、年間の見込みとして損失が発生した売買が合計で600万円位、利益が出た売買は500万円位になりそうな状況で、上場株式の配当所得も30万円位になりそうだということにしましょう。
この場合、上場株式等の譲渡損失が100万円位になります。次いで、譲渡損失は上場株式等の配当所得額を上限として、配当所得から控除することができます。つまり、配当所得額見込みの30万円位の全額を相殺できます。15年分の配当所得はゼロということになります。
また、損益通算で控除しきれなかった上場株式等の譲渡損失は70万円位が残りますが、この部分は翌年の16年以降に3年間にわたり繰り越すことができます。上場株式等に掛かる配当所得の税率は所得税で15.315%、住民税5%です。震災復興税分が乗っかっているので、妙に半端な税率となります。
総合課税を選択するか、申告分離課税を選択するかの判断は、他の所得額の状況を総合的に判断しないと、納税額に大きな差が発生し、思わぬ負担増になることがありますから注意が必要です。さらに、申告分離課税を選択すると、配当所得を含めた課税総所得金額などが1,000万円以上の場合、配当所得額の10%を税額から控除できる「配当控除」を受けることができません。
それから、1回に支払いを受ける金額が10万円以下の配当については、確定申告をしないことを選択することもできる制度があります。上場株式等の譲渡損失との損益通算も配当控除も適用はありません。「経済を知る」上で株式投資は非常に勉強になりますが、株式投資でビジネスを行うのではなく、経済を知るたしなみ程度で株式投資を行い、配当所得も10万円以下というのであれば、申告不要なこの制度は使い勝手がいいかもしれません。
そんな部分から、総合課税を選択するか、申告分離課税を選択するかなかなか難しい判断を求められるわけです。株式投資は銘柄の選定を含め最終的には自己責任が伴いますので、課税方式の選択もやはり自己責任です。
最後に、株式投資を始めると、債券投資の方に目が向き始めるのが常のようです。16年1月から変わる債券投資に関わる税制度としては、上場株式等と同様に申告分離課税制度に代わります。株式と債券の間で損益通算ができるようになるのが最大の特徴です。
つまり、債券の売買益は非課税から課税扱いになるわけで、債券投資を始める方は、この点に留意しておかないと「えっ、そんな!」ということになってしまいます。主な変更点としては10点ほどありますが、債権を特定公社債と一般公社債に区分=特定公社債になるのは国主な変更点について挙げてみましょう。
第一は国債、地方債、公募公社債、上場公社債、外国債券で同様なものなどで、他の債券は一般公社債になります。第二は公社債の償還差損益を譲渡所得とみなします。三番目は特定公社債の利子・譲渡所得を税率20%の申告分離課税に変更します。一般公社債の利子は20%の源泉分離課税、譲渡所得は20%の申告分離課税となります。特定公社債の利子で源泉徴収された分は申告が不要になります。
四つ目は、特定公社債の利子所得・譲渡所得と、上場株式等の配当所得・譲渡所得との損益通算が可能になります。控除しきれなかった譲渡損失は、翌年以降3年間にわたり繰り越せます。特定公社債も上場株式等と同じ扱いになるわけです。後は、公募公社債投資信託ですが、特定公社債と同じ税制度の適用となります。この部分は従来と全く異なりますので、注意が必要です。
それと最後の部分が意外に大事な部分です。上場株式等に関わる譲渡所得などと非上場株式等に関わる譲渡所得などを別々に分離課税する制度に変わります。これまでは同じ分類で損益通算できましたが、16年以降は上場株式等は上場株式等の中だけで、非上場株式等は非上場株式等の中だけでそれぞれ損益通算することになります。なかでも、特定公社債等及び上場株式等に関わる譲渡所得の分離課税と、一般公社債等及び非上場株式等に関わる譲渡所得等の分離課税にそれぞれ変わります。
株式投資、債券投資の減速はあくまでも自己責任。かつては損失補てんや損失飛ばしの証券不祥事で、会社がなくなった証券会社もありました。証券再編が金融再編劇の引き金になったことは否めません。あの時に証券各社の役員だった人たちは、どうなっているのか――寡聞にして聞きません。
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「証券マンが必ずもうかるから」といって顧客に買わせた結果、大きな損失をこうむり、損失補てんを行う証券会社は淘汰されましたが、私のところに電話が掛かってくる証券会社の営業職は「必ず値上がり儲かる」とは言わないが、儲かりそうな匂いを振りまき「興味をそそるような勧誘」をしてきます。
裏取りは、いまでも付き合いのある証券記者たちに聞けばいいだけので、証券会社の営業職のセールストークをまったく信用していないのが本音です。こちらはすぐに分かるので、電話勧誘の仕方はくれぐれも注意してくださいね、笑。「ギリギリの線、もしくはアウトかな?というセールストークで営業を掛けてくる時ってあるよね!」と思った方は、下のリンクボタンをポチッと押してください。
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